Sr-Nd-Hf の地球化学概論

半減期の長い放射性起源の同位体、とりわけ ストロンチウム(Sr), ネオジム(Nd), およびハフニウム(Hf)は、火成岩と変成岩の変遷、堆積物の起源追跡、大陸風化の履歴、ダストの来歴、海洋への熱水インプット、過去から現在の海洋循環パターンなど、固体地球化学および地球システム科学の分野で用いられてきました。これらの半減期の長い放射性起源の同位体は、太陽系の年代と比較して親核種からの放射崩壊がゆっくりと起こるということに特徴があります。

地球化学研究で一般的に用いられるストロンチウム(Sr)、 ネオジム (Nd)、 ハフニウム (Hf) 、鉛 (Pb) 同位体

地球化学研究で一般的に用いられるストロンチウム(Sr)、 ネオジム (Nd)、 ハフニウム (Hf) 、鉛 (Pb) 同位体

ストロンチウムには4つの天然の同位体があり (88Sr, 87Sr, 86Sr, 84Sr)、存在比はそれぞれ83%、7%、 10%、<1%です。87Srは半減期が486億年の 87Rb からのベータ崩壊によって生成されます。地質学や環境調査では 87Sr/86Sr がもっともよく用いられます。サマリウム-ネオジム(Sm–Nd)系列では、 147Sm は半減期1060億年で崩壊し143Nd になります。

Sr-Nd-Hf分析に用いられる試料の種類: 火成岩、海洋堆積物、湖沼堆積物、ミネラルダスト
Sr-Nd-Hf 分析ための 試料の種類と選択 についてより詳しい情報

地球化学的フィンガープリントおよび起源追跡 

87Sr/86Sr 比は地球化学起源、Rb濃度、岩石の年代の関数です。Srの質量が大きいことから地下水循環、岩石の風化、食物連鎖などは同位体分別を起こしません。そのため 87Sr/86Sr比は、地球化学的フィンガープリント、起源追跡、汚染予測、移住/移動研究など広く利用されています。

ダストの地球化学的フィンガープリント (Sharifi et al, 2018, EPSL)

ダストの地球化学的フィンガープリント (Sharifi et al, 2018, EPSL)

地質学

マグマの進化の過程におけるSm および Ndの分別および143Ndの内部生成(ingrowth)は、岩石の143Nd/144Nd比を年代と岩質の関数として特徴づけます。

半減期359億年で176へと壊変する176Luは太陽系システム、マントル-クラスト進化史を研究する上で非常に有用なツールです。Nd および Hf同位体比は、chondritic uniform reservoir (CHUR)の 143Nd/144(0.512638)および143Nd/144(0.282785)の偏差としてイプシロン(εNd and εHf)で表されます。

さらに詳しく: Sr-Nd-Hf-Pb 体系 について

ダストの起源と大気循環

ストロンチウム-ネオジム-ハフニウム同位体 (Sr-Nd-Hf) は様々な地質環境に存在しています。そのため、堆積物やダストのこれらの同位体比は起源追跡に用いられ、発生源の地質環境をピンポイントで特定できる可能性があります。

References

Sharifi, A., Murphy, L.N., Pourmand, A., Clement, A.C., Canuel, E.A., Beni, A.N., Lahijani, H.A., Delanghe, D. and Ahmady-Birgani, H., (2018). Early-Holocene greening of the Afro-Asian dust belt changed sources of mineral dust in West Asia. Earth and Planetary Science Letters, 481, pp.30-40. DOI: 10.1016/j.epsl.2017.10.001